第4章 時間とつながる

顔を出し続ける

以前、その病院は、トミキから商品を仕入れてくださっていた元取引先でした。

でも何かトラブルがあって、他の業者を使うようになっていたんです。院長先生が外科を専門とされているのに、消化器・外科に強いトミキの商品を扱われなくなった現状に、僕は納得できませんでした。

僕たちの会社の豊富な手術例にもとづいた情報は、きっと先生方と患者さまの役に立つ。そして取引の再開は、病院側にとってもプラスになるはずです。

僕が担当となったからには、いまの現状を何とかしたい。またお付き合いをしてもらえるように働きかけてみようと、僕は定期的な訪問を始めました。

最初は顔を出しても特に反応はなく、成果は何も出せないまま時間だけが過ぎていきました。それでもあきらめずに訪問を続けていると、少しずつ交わすようになった会話の端々から、思いがけない事実が判明したんです。

僕たちからシェアを奪ったライバル会社の営業マンは、想像していた頻度では病院へ出入りをしていませんでした。その他の業者も似たり寄ったりで、結局一番よく病院を訪れている営業社員は僕でした。病院の現状を知り、「それなら僕が訪問をしよう!」と、なおさら心が定まりました。

僕の行動は、院内の先生方やスタッフさんたちから、好意的に受け入れてもらえました。営業社員が病院に出入りをする状況に慣れた皆さんは、いろんな依頼をしてくださり、扱っていない商品を持って来てほしいとまで、お願いされるようになったんです。さすがに、この依頼には「申し訳ありませんが、取り扱っておりません」とお詫びをしましたが、困る反面、嬉しかったですね。

新たに取引を再開しているうちに、来期の備品を購入する、予算決めの時期が近づいてきました。

「いつも、よく来てくれるね」と僕に言ってくださる先生方は、姿を現さない他社の営業社員から高額な機器類を購入する決断をくだすことに、気がすすまない様子です。

医療機器の購入は取引先業者の入札で決まり、最終的にどの業者から買うかは病院が判断します。今回、どこまで自分の会社が予算に食い込めるかはわかりません。けれど今すぐではなくても、病院の最大の取引先がトミキとなる機会は、いずれ巡ってくると思っています。

僕たちの関係は、これからも続いていきます。時間は充分にあるんです。