グラフや花が無い会社
「あれ……ないな」 新入社員の私は、あるものを探していました。それは各自の営業成績がわかる、個人名を出したグラフや、成約件数ごとに飾られる花です。
仕事とは、こういうものにちがいない、と自分の頭のなかで作られた固定観念を持っていませんか。私には、ありました。
私の場合は、営業職といえば、ひたすら目の前の数字を追う仕事という印象が強かった。テレビドラマで見た、営業実績表が貼られたオフィスのイメージが頭にあったからかもしれません。それで入社後すぐ、どこかに貼り紙がきっとあるはずだと思って、フロア全体をさりげなく観察したんです。
それらしきものは、見当たりませんでした。目の前に広がるのは、課ごとに分かれた机の島と、フロア全体に散らばる先輩たちの姿だけでした。
あからさまに営業成績を表すものは、会社には存在しなかったんです。この事実は、新入社員の私にとって意外でした。
入社から10年を過ぎた現在も、あいかわらず社内には、グラフや花は見当たりません。もちろんパソコンを開けば、数値化された各自の実績を知ることは可能です。でも、目に見える成果だけで人の能力を計るような表は、どこにも存在しないんです。
目先の利益だけを追求するのではなく、お客さまとの永く続く関係を大切にしているこの会社には、数字だけを表すツールは必要ないし、似合わない。
今の私には、グラフや花のない理由が、よくわかります。
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ただ単に、売上だけで人を評価するのはナンセンス。
社内にグラフや花をわざわざ貼り出す必要はない、と私は思っています。
営業社員たちの業績は、私たち管理職が把握していればいい。調べようと思ったら、各課、個人の目標とすべき予算と販売実績・達成率は、パソコンのデータを見れば誰でも見られますから。
確かに目標は達成すべきで、そのために私たちは行動しています。
しかし人の評価は、単純な数字だけでは下せませんよね。担当エリア・病院の規模などの与えられた条件は、社員ごとに違います。結果だけを羅列しても見えない要素が、必ずあるんです。
今まで取引のなかったお客さまから、新規で機器を購入してもらえた。
その売上金額は、小さいかもしれません。
でもゼロからお客さまとの間に信頼関係を築いた、部下の功績は大きい。
データの数値には表れない努力を、私たちは見逃しません。
だからこそ、ただ単に機器を○○台売りましたと、一律に台数を競うようなやり方は、トミキにはいらない。私はそう思っていますね。
予告 『仕事以外の話で、1時間雑談せよ』
公開までもう少しです!